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惨敗
「……はぁ」
パーティーの結果は散々だった。あのあと、お兄様に合いそうな女の子を見つけては声をかけたのだけれども。どうやら、最初にカイト殿下に声をかけられた女子は私だったようで、どの子からも冷たい視線を浴びせられた。
おのれ王子め、許せん!
「セレス、お友達はできた?」
帰りの馬車で、お兄様が心配そうな顔で、私を見つめた。
「ええと、その……」
今日は、子供だけのパーティーだ。帰ったらお父様にも報告しなきゃいけない。
けど、悲しいことに成果はゼロだ。
「そっか。でも、大丈夫だよ。チャンスはまだあるからね。これからも、パーティーなり夜会なり何度も行われるんだから。だから、大丈夫」
そういって、優しくお兄様は、私の頭を撫でてくれた。
「……うう。お兄様やさしい、好き」
「!」
お兄様は、目を見開いた。
あれ? 私、そんなにおかしなこと言った?
兄妹で好きー、とかいうのそんなにおかしかったかな。そういえば、前は言ったことなかった。
前世の記憶と人格がまざりあって、いまいち前と同じ距離感がつかめてなかったかも。
「……お兄様?」
固まってしまったお兄様の顔を覗き込む。すると、お兄様は、フリーズから目覚めた。
「ん、ううん……なんでもないよ、セレス」
そういって、再び頭を撫でてくれる。
その心地よさに目を閉じながら、私は、初めてお兄様と出会った日のことを思い出していた。
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