惨敗

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

惨敗

「……はぁ」  パーティーの結果は散々だった。あのあと、お兄様に合いそうな女の子を見つけては声をかけたのだけれども。どうやら、最初にカイト殿下に声をかけられた女子は私だったようで、どの子からも冷たい視線を浴びせられた。    おのれ王子め、許せん! 「セレス、お友達はできた?」  帰りの馬車で、お兄様が心配そうな顔で、私を見つめた。 「ええと、その……」  今日は、子供だけのパーティーだ。帰ったらお父様にも報告しなきゃいけない。  けど、悲しいことに成果はゼロだ。 「そっか。でも、大丈夫だよ。チャンスはまだあるからね。これからも、パーティーなり夜会なり何度も行われるんだから。だから、大丈夫」    そういって、優しくお兄様は、私の頭を撫でてくれた。 「……うう。お兄様やさしい、好き」 「!」  お兄様は、目を見開いた。  あれ? 私、そんなにおかしなこと言った?  兄妹で好きー、とかいうのそんなにおかしかったかな。そういえば、前は言ったことなかった。    前世の記憶と人格がまざりあって、いまいち前と同じ距離感がつかめてなかったかも。 「……お兄様?」  固まってしまったお兄様の顔を覗き込む。すると、お兄様は、フリーズから目覚めた。 「ん、ううん……なんでもないよ、セレス」  そういって、再び頭を撫でてくれる。  その心地よさに目を閉じながら、私は、初めてお兄様と出会った日のことを思い出していた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!