はなしあい、はなしあい。

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 山の神様、なんてものが実在するのかはわからない。しかし少なくとも今見たアレは、先生達が“学校の中の、要らない生徒を生贄に捧げる”のを是とし、当然のように選ぶための会議をしていた現場ではないのか。  今までこの町で子供が消えていたのは。それも、悪い子、とされた子ばかりいなくなったのは。学校の先生たちが、学校にとって邪魔になる子を生贄にしていたからとでも?無論、本当に神様に攫われていたのか、神様に捧げると言う名目で先生たちが殺していたのかはわからないが――。 ――し、信じられない。うちの学校って、そんな学校だったのか?ま、まさかな……嘘だよな!?  僕は頭が真っ白になりながら、絵具箱を抱えて家に戻ったのだった。なお、その日は恐怖で体が震えてしまい、とてもじゃないが絵に手をつけることなどできなかったと言っておく。  夏の終わりの、恐怖の記憶。  この話には、実は少しだけ続きがある。というのは、数日後冷静になって記憶を思い返してみて、いくつか気づいたことがあるからだ。  一つ目は、クラス。今の僕達の学校では、どの学年も最大で三クラスまでしかない。二年五組も、四年六組もないのに、あのホワイトボードには記載されていた。  二つ目は、あの職員室で会議をしていた先生たちの顔と書かれていた名前。多くに見覚えがなかった。特に書かれていた名前が、揃いも揃ってちょっと古めかしい名前だったのはどういうことなのか。  その謎は新学期になってから解けることになる。友人の(れん)くんから、学校の七不思議のひとつを聞かされたのだ。“職員室での秘密会議”。夏から秋にかけて、見知らぬ先生たちが謎の職員会議をしている現場を目撃する、というもの。ということは、僕が見たあの先生たちは幽霊だったのだろうか。あるいは、過去のビジョンか何かだったのか。 ――確かなことが、二つだけある。  漣くんは“七不思議見られるなんてすげーじゃん!”なんて笑っていたが、僕はとても笑い飛ばす気にはなれなかった。  何故ならばあの職員会議を仕切っていた中年の太ったおじさん先生の顔が――立派なおじいさんではあるが、今の校長先生にそっくりだと気づいてしまったから。そして。 ――今でも、子供は消えている。  新学期早々、三年生の女の子が一人いなくなっている。  それが山の神様のせいだったのか、幽霊のせいだったのか、人間の仕業だったのか。それは、僕が大人になった今でもわかっていない。
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