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プロローグ
お母さんが死んだ
まだ44歳だった
癌を患って死んでしまった。
母が死ぬ前に言った一言
「あの子をお願い」
あの子とは、母さんが大事にしている球体関節人形の事だろう
私が生まれる前から母さんが大事にして、絶対に家から出さなかった人形、
母は、収集癖があった。吸いもしないのに煙管をいくつも持っていたり、キレイだからと扇子もたくさん、傘はこだわりの和傘で5本ほど持っているし、綺麗な食器も好きでいっぱい集めてコレクションするのが好きだった。
中でも一番大切にして集めていたのが球体関節人形のための服や小物でお金を惜しまず買っていたくらい人形を大事にしていた。
名前は確か雪華だったかな、菫色の綺麗な瞳の真っ白なドレスを着た黒髪で色白だから雪の花のように美しいって意味よって
嬉しそうに言ってたのを覚えてる。
私が寝る時は雪華も雪華用のベットに入れられて私のベットの隣で母さんの読む本を聞いていた。ご飯を食べる時も
雪華用の椅子があり雪華も同じ机に並んだ
母さんは雪華を子供のように扱っていた。
小さなころから行われる行為に私も疑問を持たず生活していた。
雪華は食事や寝る時以外は必ず子供の私の手の届かないところに置かれていた。
けど私が中学の時、友達に雪華の写メを見せた。
「かわいい!私球体関節人形好きなの、今日時間ある?
私の家で私の人形と合わせで写真撮ろうよ!」
そう言われて嬉しかった。中学初めての友達だし、
仲良くなるために雪華を連れて行こうと思った。
お母さんにはメッセージだけ送って、私は家に帰って
雪華を連れて友達の家に行った。
友達の家の人形は男性の人形だった、白い髪が綺麗で美人で、雪華に似合っていた。
雪華にも恋人が欲しいなぁって言ってた母さんならきっと
この写真を気に入ってくれるかもしれない、そう思って友達の家から帰って家に意気揚々と入ると母さんがダイニングの机に座って頭を抱えていた。
「ただいま、母さんどうしたの?」
母さんは私の声を聞いて勢いよくこっちを見た
「雪華!」
そして勢いよく走って来て雪華を奪い取った。
その時の母さんが私の顔を見る時の目は誘拐犯でも見るような目だった。
「雪華、あぁ雪華、よっかったどこも怪我はない?
あぁ怖かったね、ごめんね、私の管理が悪いから!ごめんね雪華」
お母さんはボロボロと泣きながら雪華を撫でている
「かあ・・・・さん?」
私が呼ぶと母さんはキッと私を睨み雪華を優しく雪華用の椅子に置いて
私の方に来た、その顔は憎々しい物を見るようで、そして手を振り上げ
瞬間パチンッと渇いた音が部屋に響いた。
「雪華に触っちゃダメって言ってるでしょ!!あろうことか外に出すなんて!!
もう雪華に触らないで!近づかないで!」
それだけ言って母さんは部屋に入って行った。
そして人生で初めて母さんの部屋から鍵のかかる音を聞いた。
その日から雪華が部屋から出てくることはなくなった。
そして母さんとご飯を食べることもなくなった。
お母さんは普通に接しているけどその行動が異常に感じてきた
ご飯は私が食べ終わった後、雪華と食べるし
いまだに雪華に寝る前に本を読むし、用が無い時は部屋にこもっているので
あの日から私はまるで一人で家に居るみたいな感覚になった。
母さんにとって私より雪華のほうが大事だったのだ
ずっとそんな生活が続き、嫌になった私は高校で必死にバイトして勉強もして
新聞特待生で大学進学し、自分でマンションを借りて母さんに黙って家を出た。
あれから10年、母さんから一度も連絡なんてなかったのに
病院の人から連絡があって母さんが会いたいと言っていると聞いた。
嫌だったけど、流石に親が死ぬと聞けば会に行くしかない
母さんは未婚のシングルマザーで、疎遠の妹しか居ない、おじいちゃんもおばぁちゃんも、もう死んでしまっている、私しか頼れる家族はいないのだから
そして、会に行ったらあの言葉だ、
結局母さんにとって大切なのはあの人形だけだった。
私は遺品整理もかねて、葬式のため、母さんが一人で住んでいた家に行った。
扉を開けると10年前と変わらない家があった。
内装も変わらない懐かしさを感じながら私の部屋だった場所を開けると
部屋の中に少年がいた。
白い髪の綺麗な顏の10さいくらいの少年が
真っ赤なドレスを着た雪華を抱っこしながらこっちを見ていたのだ
私は理解したお母さんがよろしくと言っていたのは
きっとこの子のことなんだと、だって私の部屋だった場所に私の物はなく
その子の物であろうおもちゃやゲームが片付けられて居たのだから
「そ、その子に触ると母さんに怒られるよ」
私がそ言うとその子は小首をかしげた。
「母さんが恋人はそばにいないとだめだよって僕にくれたんだよ」
愕然とした。この子は雪華の恋人としてここにいるのだと言う事実に
私には一度も許可してくれなかったのに、この子には触れさせるのだと言うことに
この子は母さんにとって大事なコレクションなのだ
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