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そしてその下に隠れた目はもう変わってしまった。
俺は、前髪越しに自分の目を触る。
「もう覚えてないよ。目の形なんて」
「・・・そうだね。私も忘れた」
妹は、寂しそうに黒曜の目を下に向ける。
「もうあの頃とは違うんだよね」
両手をお腹の下に落としてぎゅっと握る。
「来月、彼と婚姻を結ぶわ」
その言葉に俺は、唇の端を噛む。
驚くことじゃない。
その話しはずっと前から知ってたことだ。
忘れもしない1年前。
妹の口から直接聞かされた。
その想いも。
その計画も。
でも・・・。
「本当にいいのか?」
「いいも何もないでしょ」
妹は、小さく笑う。
「そうしないとこの国に未来はないのだから。私達にもね」
俺は、血が出るくらいに唇を噛んだ。
「彼は、しっかりと理解してくれたわ。少しウジウジしたところもあるけどお父様達にはない強さと決意を感じたわ」
妹は、ぎゅっと両手に力を込める。
「彼とならこの国を、世界を変えられるはず!」
その言葉には妹の強い決意が刻まれていた。
「セツカ・・」
俺は、妹の名を口に出すもその続きを紡ぐことが出来なかった。
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