第23話 はなれていても、そばにいても

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「あ、あの、おすすめってなんですか?」  初めてのお店でこの質問をすることなんて、今までの私だったらできてなかったと思う。  今は隣に四季さんがいてくれるからっていうのもあるけど、一歩進めた気になれた。 「そうねぇ、辛子明太子が人気だけど、私個人としては、この鶏ごぼうむすびもおすすめよ」 「どちらもおいしそうですね。二つくらいがちょうどいいかな……」 「天むすはもう売り切れちゃったのかな?」  私がおすすめされた二つをじっと眺めていると、後ろから四季さんの声が聞こえた。  ここにあるものが全ラインナップではないらしい。 「そうね。天むすはいつも、一時前にはなくなっちゃうわ」 「ここの天むすはみんな大好きなんだよ」 「そうなんですね。残念ですけど、それは次の機会にします」 「あとは高菜とか、梅とじゃこのおむすびも、うちではよく食べてるかな」 「え、そんなに食べられないですよ。ちなみに、四季さんのおすすめはどれですか?」  これ以上選択肢を増やしてもしょうがないんだけど、四季さんの好みも聞いておきたい。  他のみんながどれを選ぶかも気になるけど、今は四季さんが一緒なんだから。 「僕は天むすか鶏ごぼうだね。あと、塩むすびも好きかな」  最もシンプルな塩むすびは、百十円と値段が安く、残りの数も少なくなっていた。  他は二百円前後のものが多いけど、高いものは三百円を超えるものもある。
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