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第21話 お留守番
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六月も下旬に差しかかり、近頃は曇りや雨の日が増えてきた。
梅雨入りが発表されたばかりの頃はあまり雨の量は多くなかったけれど、最近ようやく梅雨らしくなってきた。
この時期は好きじゃないという人が多いかもしれないけれど、最近新しい傘を買ったこともあって、私は割と雨の日を楽しめている。
今日は一日中弱い雨が降り続いていたから、お気に入りの傘を存分に使うことができた。
「莉亜さん、おかえり」
「ただいま」
玄関の扉を開けた私が傘についた水を切っていると、四季さんが出迎えに来てくれた。
この傘は四季さんと一緒に買いに行ったものだから、使っている様子を見せることができて嬉しくなる。
今年の四月から私が住むようになったこのアパートは、名前を勿忘荘といって、四季さんが大家さんを務めている。
私が初めてここに来た日に、四季さんから「ただいま」は「おかえり」のあとにしてほしいと言われていて、そのあいさつのしかたが今となってはすっかり定着した。
「すぐにごはん、食べるよね?」
「はい。もうみなさんお揃いですか?」
私が靴を脱いで中に入ると、四季さんがゆっくりと歩きだして私に質問をした。
時間はもうすぐ夜七時。ちょうどいい具合におなかがすいている。
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