<2・タイカ。>

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「対価が必要になるかは、貴女次第です」  澪はくすくすと笑いながら言う。 「例えば。貴女を虐めていた少女の一人……浮島冬香(うきしまふゆか)さん。彼女に貴女は数々の責め苦を受けた。そうですね?」 「ええ、その通りよ」  浮島冬香。“あの女”の取り巻きの一人だ。まるで金魚の糞のようにくっついて回り、くだらない虐めをせせら笑って見ているような性悪女。バレーボール部で活躍しているとかなんとかで調子に乗っているというのもあるのだろう。長身に、ガキっぽいポニーテールが特徴のスポーツ娘だった。 「貴女は彼女に対して、どんな拷問も行うことができます。勿論、そのまま殺してしまうことも……貴女の仕業だとけしてわからない形で死体を発見させることも。なんなら死体を抹消してしまうことも可能。……貴女が払う対価は、引き算になるのです」 「引き算?」 「そう。浮島冬香が貴女に対して行った悪行に対して、貴女が彼女に対して生ぬるい責めを行うか……もしくはぴったり等価の責め苦を負わせれば、何も問題はありません。貴女は後払いの対価を、一切払う必要がなくなります。問題は、彼女の悪行を裁くより過剰な責め苦を行ってしまった場合。貴女はその分の対価を、自らの魂で払わなければいけない。……この匙加減は、なかなか難しいものです」  す、と彼女は綾乃の方に手を伸ばしてくる。 「さて、その上で貴女に問います。魔法の力を受け取りますか?対価の徴収は、全ての復讐が終わったあとで結構。匙加減を間違えない限りは、貴女はタダでカエシオニの力を使い続けることができる……なかなか魅力的だとは思いますが?」  なるほど、と綾乃は頷いた。そして、思わず口元が歪む。  自分は、あいつらに言葉に尽くせぬほどの辱めを受け続けてきた。生ぬるい仕返しではけして満たないほどの苦しみだと確信している。つまり、多少拷問したくらいでは、対価など一切払う必要がないということではないか。  何も問題はない。むしろ、僥倖と思うべきだ。しかも対価は後払いだから、途中で妙な水を差される心配もない。 「……それでいいわ。あたしに、魔法の力とやらを頂戴」  これで自分は、忌々しい日々から解放される。あのクズ女どもに、めいっぱい復讐して。
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