夏が終わった街

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ひやりとした風が濡れたスニーカー越しにつま先を撫でる。 8月下旬、雨上がりの夜。 ようやく仕事から解放されて、妙にはっきり見える半月に見守られながら家路を急ぐ。 今日も散々だった。 体調不良が続出して急遽出勤になるし、そんな日に限ってクレームが出るし。 せめて好きなものを食べようとコンビニに入ったら、おでんが売り切れていた。 その代わりに、夏が終わって売り場が小さくなった冷凍ケースのアイスを買った。 アイスなんて久しぶりだ。 買ってから、やっぱり寒すぎるかと後悔した。 これを美味しく食べていた季節があるなんて嘘みたいだ。 夏がいつ終わったのか、正確にはわからないらしい。 今年は冷夏です、例年よりも涼しいです、なんて言ってた気象予報士が、いつからか、異常気象です、気温が上がりません、このままだと夏は来なくなりますと言い出して、それすら言わなくなって。 今やもう、7月だろうが8月だろうが、海に入ったら凍えてしまうし、打ち上げ花火は雪の中。 セミの鳴き声も陽炎も存在しない。 夏フェスなんて言葉は死語になった。 夏は終わった。 二度と来ないのだ。
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