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朝、鏡の前で髪をとかす。これまではボブだったけれど、今は伸ばしている。
夏休みに入ってからは首が暑いから、いつも1つ結びだ。
「……お、おはようっ」
登校して自分の席に着くと、隣の太田くんに挨拶した。
「──岩瀬?」
太田くんは目を見開いてしばらく固まっていた後、少し掠れた声で言った。
「うん」
何、その質問。
「あ、髪型が違うのか? 俺が席、間違えたかと思った」
いつもみたいにうひゃひゃ、と笑う姿に思わずホッとした。
私だって、席に着いたとき一瞬目を疑ったよ。太田くん、また背が伸びてシュッとした感じになってるんだもん。
なんだか視線を感じて、そちらを見る。紗英ちゃんと愛莉ちゃんが顔を見合わせながらこちらに向かって手を振っていた。
一応振り返しておいたけど、なんだろう?
学活は1時間で終わり、下校することになる。今日は部活がない二人と、校門まで一緒に歩く。
「朝さ、優花と太田、なんかいい感じだったね」
愛莉ちゃんがニヤニヤしながら言った。
「何が?」
「なんか、楽しそうだったじゃん?」
紗英ちゃんまでニヤニヤしている。
「おはようとか言ってただけだよ。もう、二人ともなんでそんな顔してんの!?」
なんでかはわからないけど、恥ずかしくなってきた。
夏の太陽に照りつけられているせいか、顔だけが異常に熱い。
心臓もバクバク鳴ってる。ヤバい。熱中症の危険が迫っているのかも。
私は慌てて、リュックの横ポケットに入れてある水筒を取り出してゴクゴクとお茶を飲んだ。
でも、顔が熱いのも心臓の音も収まらなかった。
「じゃあ、またね」
私だけ家の方向が違うので、2人とは校門で別れて帰宅する。
1人で歩いていると、脳裏にさっき見たばかりの登校日バージョンの太田くんと、ニヤついた愛莉ちゃん達の顔が浮かんでくる。
いつもでも続く激しい心臓の音。
私、なんか変。どうしたんだろう?
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