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きっと私からの誘いを受けてくれたのは、最後に日本での私との思い出を作りたかったからなんだろう。幼なじみとの夏の終わりの思い出を、旅立ちの前にほしかったんだ。甘酸っぱい青春のワンシーンとかじゃない。
目の前がぼやける。少し前、告白しようかと悩んでいた自分を殴りたい。舞い上がって馬鹿みたいだ。でも、それを夏希に悟られるわけにはいかない。
「……そうだね。私たちはずっと幼なじみだね」
笑顔を無理やり作って言う。そうしたら夏希は満足そうに笑って、また花の咲く夜空を見上げる。その隣で私は、溢れてしまいそうな涙をこっそり拭った。
この恋が花火と共に散ってしまったらと強く思った。でも、想いは私の気持ちとは裏腹に燃えていく。
夏の終わり、最後に見た花火はぼやけて見えた。
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