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……カランカラン… 「……あっれぇ? マスター、若返ったのぉ?」 「は?」  これが私たちの出会いだった。 「はははっ。こんばんは、おタマさん」 「んん〜……あっれぇ? マスターが二人いるぅ?」  私が実家の如く通い詰めるバーには老齢のマスターがいて、早期退職後にバーテンダーの資格を取り開いたらしいその店はカウンター7席程のこじんまりしたところだった。  そこに通い詰めてもう6年程になる私は、今日も先程まで行われていた仕事の会合後に、ぐでんぐでんのままここを訪れた。 「そうだ、おタマさんに言ってなかったねぇ。この子は僕の親戚の子でね。お昼のカフェを手伝ってもらってるんだよ」 「……わたし、おひるまれ飲んでたのぉ?」 「ふふふ、今はまだ夜だねぇ。今日はたまたまね、夜も手伝ってもらったんだ」 「ほ〜ん」 「ほら彰人くんも、挨拶して。こちら、うちのお得意様だよ」 「……っす。野分彰人です」  渋みあるマスターもいいと思っていたが、若く凛々しい青年もまっこと良きかなと、ぐらぐらする頭で思っていた。 「のわきぃ〜? ふふっ、なぁ〜んだ、台風の子かぁ〜」 「え? 台風?」 「それにぃ、同じ冬っ子だねぇ? ふふ、わぁたし、冬野! 冬野おタマ!」 「は? 冬……え、なに? タマ?」 「うはは! かわいいねぇ! ねぇ、君さぁ」 「っ?!」 「お姉さんとぉ、結婚しよぉ〜?」  多分私史上、いや彼史上においてもきっと、最悪の出会い方をした私たちだった。
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