ひとつ屋根の下、殺し愛

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 セツナにキスされて、リクヒトは猛烈な眠気に襲われる。まるで遭難時に急激に眠くなったかのような唐突な睡魔。  抗うこともできず彼女の腕のなかに倒れこんだリクヒトを見下ろし、セツナは聖女のごとく淡く微笑む。 「せっかく死ぬのなら、あなたと一緒がいいわ」  バンバンと扉を叩きつける音がおおきくなる。  山の神とその御遣いたちがセツナにその罪人を渡せと騒いでいる。  人食い熊の姿になって裁きを与える山の神はまだ怒っているのだろう。五人のうちのふたりを屠ることは叶ったが、獲物である夫婦はリクヒトに殺され、そのリクヒトはセツナの元にいる。山の神はセツナがリクヒトを庇っていると思っているのか、荒々しく山小屋の周りで騒ぐばかり。 「おあいにくさま、彼はあたいのものよ」
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