プロローグ

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プロローグ

 全ての授業が終わった後の教室から、生徒達はそれぞれに次の居場所へと向かった。ある生徒は習い事へ、ある生徒は学童保育へ、ある生徒は家族の待つ自宅へ、迷うことなく進んでいった。それらの生徒が纏う服はどれも綺麗で、背負うランドセルや髪も陽光を浴びて輝いていた。  しかし、それはボロボロの衣服を身に纏い、教室に残ったままの一人の少年を除いてだった。  向かうべき場所の無い少年は、ただ閑散とした教室で佇んでいた。校庭からは楽しそうな声が聞こえてくるが、少年からそれに参加しようとする意志は見受けられない。  痩せた少年の薄汚さに合わせるかの様に、彼の持つランドセルは汚れ、くたびれていた。
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