プロローグ

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プロローグ

「今日はお時間を頂きありがとうございました」 エレベーター前まで送ってくれた速水(はやみ)さんと目が合い、ドキッとする。 目尻の上がった切れ長の目を直視できない。慌てて視線を速水さんの肩の位置に落とした。 速水さんの肩の高さと私の身長がほぼ同じだ。 背、高いな。180㎝以上はありそう。 ネイビーのスーツ素敵だな。 なんか柑橘系のいい匂いもする。整髪料とかの香りかな? だけじゃ、速水さんに香りがある事は気づかなかった。 「卯月(うづき)先生」 落ち着いた低い声で呼ばれる。 本名の内田美樹(うちだみき)と違う名前。 今日、何度も速水さんに卯月先生と呼ばれたけど、まだペンネームで呼ばれる事に慣れない。 年上の速水さんに先生と呼ばれるのもなんか変だし。 「あ、はい」 「卯月先生とどこかでお会いしている気がするのですが、私に見覚えがありませんか?」 心臓がギュッと縮む。 「えっ……」 まさか速水さん、私を覚えていたの?
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