ヒトガタ

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 目を開いて、おたがいを見合っていた。  しばし静止していたかと思うと、いきなり佐藤がこちらの肩を強めに、ばんと叩いた。 「んなワケねえだろ。ホラー映画じゃあるまいし」  必死に笑いをこらえているのを見て、担がれたのだと悟った。 「なんだよ、まさか……ぜんぶ嘘かよ!」  目を細め、喉の奥で笑っている。いやいや、と言い、手をひらひらと横に振った。 「おまえがやけにビビってるから、ちょっと引っかけたくなったんだよ」  入ってたのはマジだよ、と付け加える。 「押し込んであったから、なかなか出てこなくてさ。ピンセットで引っ張り出したら」  ほら、と佐藤は斜め上を見た。過去を思い起こしている。 「あれだ、香典袋の高いやつ。脚の内部に収まるていどだから小さいんだけどな。あれみたいに、上下を折りたたんだ紙に包んであった」  まんまとしてやられた。腹立ちまぎれに訊ねる。 「いったい何がだよ」 「髪」 「カミ……?」 「そうだよ、髪の毛。と言っても細く切り刻んで、念入りに短くしたやつが大量に挟んであった。ああ、あと睫毛らしいのとか……下の毛っぽいのも」 「は?」 「気持ち悪いだろ? しかもご丁寧に両足に仕込んでやがってさ」 「は……あぁ?」  人毛の細切れに込められた想念とは、いったいどのようなものだろう。考えようによっては、虫の脚よりも始末に負えないかもしれない。前の持ち主は、なにを考えてそんなことをしたのか。 「佐藤、おまえどうすんだよ、それ」 「ああ、もう供養してもらったよ」  えっ、と声が出た。 「菩提寺に持って行って、相談したんだ。だからもう平気だろ」 「って、おまえ、人形も納めたんだろうな。いっしょに供養してもらったんだよな?」 「は? そんなわけねえだろ、なんで本体まで納めなきゃいけないんだ」  心底、意外そうに佐藤は声を出した。 「いったい、いくらしたと思ってるんだ」 「いくらって……」  金の問題じゃねえだろ、と言いたくなる。
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