夏の思い出

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「莉子ー。起きてらっしゃーいっ」  階段下からお母さんの声が聞こえてくる。  うーん……。動かなくちゃいけないのは、わかってるけど。  そう思いながらも、ごろん、ごろん、とベッドの上からは離れられない。  トントン、と階段を上がる足音が聞こえる。  え? 起こしに来たの?  いつもならこんな早くに起こしにくることないのに。 「莉子。起きて」  ノックもせずに部屋に入ってきて、私が抱え込んでいたタオルケットを引っ張る。 「なんで? 今日は夏休み最後の日曜日だよー。もうちょっとゆっくり寝たっていいでしょ?」 「そうもいかないのよ。今日ね、あやちゃんを預かることになったの」 「あやちゃん?」  あやちゃんとは、隣の家に住んでいる小学一年生の女の子。  ちっちゃい頃から「莉子ちゃん」と呼んでくれて、仲良くしているかわいい子。こんな妹いたらいいな、なんて思っちゃうくらい。  学校があるときには一緒に登校班で通っているし、毎日顔合わせていたけど、夏休みに入るとあやちゃんは学童に行っていることもあって、隣といってもなかなか会えない。 「なんで? あやちゃんち、どうかしたの?」  なんとなく気だるかったのに、一気に目が覚めて体を起こした。 「あやちゃんのおばあちゃんね、遠くに離れて住んでいるんだけど、転んで骨折しちゃったんですって。で、お母さんがお世話するためにそちらに帰っているのよ」 「そうなの? 大丈夫なの?」 「そうね。おばあちゃんの様子はだいぶ良くなってきたみたいよ。もう夏休みも終わっちゃうし、明後日にはこちらに帰ってくるみたい」 「そっかぁ。よかった」
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