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もう間もなく秋が訪れる頃、蒼弥はこうして事故に遭った。どう考えたって、俺の所為だ。
蒼弥の身体が浮き上がった瞬間、俺の視界から色が失われた。蒼弥から零れ出る赤だけが、不気味なほど鮮明に色を持っていたのを覚えている。
俺が駆け寄った時、意識はあったが喋る事はできなかった。けれど、虚ろな目で俺を見つめ、何かを伝えようと必死に口を動かしていた。
頭から大量に出血していたので、動かしてはいけないと思った。だから、抱き締める事もできなかった。冷たくなってゆく手を握って、涙をボロボロ落としながら蒼弥の名を叫び続けた。
救急車が到着して、一緒に乗り込む。救急隊の邪魔にならないよう隅に寄って座る。病院に着く手前で、心停止した蒼弥を見て絶望感に打ちひしがれた。
緊急手術が行われる。両親が来るまで、俺はベンチに座り放心状態で血塗れの手を見つめていた。
父さんが着替えを取りに行ってくれて、言われるがまま着替えて手を洗った。流れてゆく血を茫然と眺め、蒼弥の落ちてゆく体温を思い出し嘔吐した。静かに溢れて落ちる涙が止まらない。
5時間にも及ぶ手術を終えた。懸命な治療のおかげで、蒼弥は息を吹き返したのだ。集中治療室に入り、沢山の線に繋がれている。後遺症に関して、現段階では何とも言えないらしい。
それでも、生きていてくれるなら何でもいい。俺は、病室の前で声をあげて泣き崩れた。
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