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《今もあなたのことは嫌い。来て欲しくなかったと思ってる。》
二人きりで話したときにぶつけられた言葉と同じにも拘らず、しかも文字の方が与える攻撃力は大きい気がするのに、何故か冷静に受け止められた。
《航に、「エイリちゃんが羨ましくて嫉妬してんだろ。思うのは勝手だけどあの子を傷つけたら許さない」って言われた。》
《なんかそれでやっとわかったんだ。あたしはどこまで行っても「幼馴染みの友達」で、「航の特別な女の子」にはなれないんだって。》
やはり佐野は、ただ感情で暴走するだけの人間ではないようだ。
《でもそれは「今」で、この先はわかんない。バカみたいって思われてもいいから、あたしは絶対諦めない。》
《エイリさんに当たるのはやめる。だってあなたがいなくても、あたしが代わりにはなれないって航にはっきり言われたみたいなもんだから。あたしがしなきゃならないのは、エイリさんを追い払うことじゃない。》
瑛璃が何か反応しなければ、と考えつつも、入る隙がないほどに立て続けに書き込まれる彼女の言葉。
もしかしたら、航を挟んでではなければ彼女とはわかり合えたのかもしれない。
いや、やはりそんなものは幻想でしかないのか。
そもそも航がいなければ、一生言葉を交わすこともなかった筈の二人なのだから。
《おしまい。これ、話じゃないよね。あたしが言いたいこと言っただけで。》
《いえ。聞けて良かったです。》
最後のメッセージに既読がついたきり、もうトークが更新されることはない。
航の声とノックの音に、瑛璃はアプリを閉じてドアを開けるため立ち上がった。
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