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【Prologue】
「はじめまして。浅香 瑛璃です。厚かましいですがお世話になります。よろしくお願いします」
伯父の家に着くと、瑛璃は出迎えてくれた伯母に母から託された箱と封筒を渡して挨拶した。
「瑛璃ちゃん、いらっしゃい。遠いところお疲れ様。何もない田舎だけど景色と空気はいいから。もうすぐ航も部活から帰って来るし、お夕飯の前にちょっとこの辺り案内するわね」
間近でも「とりあえず化粧はしている」程度にしか見えないのに美しい彼女は、少なくとも表面上は優しい笑顔と口調で瑛璃を歓迎してくれている。
事前に伯父一家の写真は見せてもらっていた。
伯母は一切着飾ることもせず気楽そうな普段着そのままで、髪は後ろで無造作に束ねている。
もしかしたら化粧もしていないのではという印象にも関わらず、驚くほど綺麗だった。
真の美人とはこういうものなのだろうか、とつい感心してしまった。
伯父と同い年夫婦で、母と伯父は少し年の離れた兄妹のため伯母は母より七歳も年上だというのに。
母も娘の瑛璃の目にも四十過ぎの割には若く見えて、端正な容貌だとは感じている。それでも流石に「目を引く美貌」というほどではない。
そして、特別大柄ではない伯父とごく平均的に見える伯母の間で一人頭が出ていた従兄。
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