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言葉をつかえる狭霧を鼻で嗤い、結花はニヤリと口元を歪めた。
「きれい事言ってるけどさあ、結局は自分は助かりたいって思うのが本心でしょ。ほら優美、迷ってないで飛高さんに写真、送っちゃいなよ。飛高さんじゃなくても、他の誰かでもいいじゃん」
「そんなこと、できるわけない!」
「死んじゃうよ。倉橋や一ノ瀬みたいにむごい死に方するかもよ。いいの?」
「もうやだ……ほんとやだ!」
優美は泣きながら、一歩、さらに一歩と後ずさり、部室を飛び出していった。
「おい! 待て!」
龍樹が呼び止めるも、優美が戻ってくることはなかった。
結花は腹を抱えて笑った。
ひとしきり笑った後、結花は上目遣いに龍樹を見上げ、手にしているスマホをおどけた仕草で振る。
「あのね、写真を送ったの、実は優美だけじゃないんだ」
「な……?」
「もう一人いるの」
こいつ、何を言い出そうとしている。
「あたしね、狭霧にも写真を送ったんだ」
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