でも、だって初めてだったから

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 和音がキスに夢中になってる間に、もう俺も我慢が出来なくなって自身を和音に押し付けた。  ん、と鼻息が漏れて、和音もそれに意識をしたのがわかる。  ここまで濡れていると潤滑油もいらない。  オメガというのはそういう生き物で、かわいそうで、それでも求められることに嬉しいと思ってしまう。  ここはもう、俺しか挿入れない場所。 「ん、ん、んう……ゔ」  先が挿入ってしまえば後は簡単に和音のナカに潜ってしまえる。ぎゅうぎゅう締め付ける癖に、柔らかくて、もっと奥に入ってと言ってるかのよう。  唇を離さずに息を漏らす和音の髪を撫でる。  今更痛みも恐怖もないだろうけれど、それでもやはり負担が掛かるのは受け入れる方だ。だから濡れる。守る為に。 「は、あぅ……う、ン……」 「気持ちい?」 「ん、んう、う、きもひい……」  俺の唇を噛むのに夢中だ。そんなことで満足するなら幾らでもすればいい。  明日唇が腫れてしまっても、ヒート休暇だから構わない。  動いてもいい、と訊くと、やっと離れた唇が、うん、と頷いた。 「……ッ」 「はー……まだ奥、狭いね」 「んあ……」 「ん、気持ちいいねえ。突かれるのとぐりぐりされるの、どっちがすき?」 「どっ……ぁん、う、どっちもお……っ」 「どっちもかあ、うん、どっちもしよう、ねっ」 「あッ……!」  ひと突きするだけでびゅく、と和音のものから白いものが溢れる。  奥の方を、ゆっくりと押すように、とんとんと動かしたり、押し付けるようにぐりぐりとすると、じわ、と漏れる。  素直な和音のものも、もう喘ぐことしか出来ない和音の口も、どちらも愛おしい。  でも俺、まだ一回もイってないんだよね。  かわいい和音に散々煽られて、正直限界。 「ね、もっと奥、入ってもいい……?」 「おく……」  もっと?と少し膨らんだ腹を擦り、和音が呟く。  そう、もっと奥。入るもんね? 「ゆうまさんのすきに、して、いいよ……」 「和音がヤなら我慢するよ」 「やだ、しないで、がまん……きょう、薬、飲んでないんでしょ……?」 「うん」 「おれ、ヒート中、は、いたくない、から……ゆーまさん、いっぱい、すきにしていいよ」 「……んぐ」 「あ、おっきくなったあ……」  嬉しい?と無邪気に和音が訊く。  嬉しいというか……  発情期の和音はえっち。もう。知らん。 「きもちいよ、悠真さんが、くれるの、ぜんぶ。いたくない、くるしくないから、もっと、きもちよく、して」  だいすき。  そう動いた唇に我慢が出来なかった。  和音の腕を取って、背中に回させて。もっと密着して、腰を進める。  和音の躰がかたくなって、指先に力が入る。短く切った爪が、それでも尚肉に食い込む。  不思議とその痛みすら気持ちいい。 「あ、あ、奥っ……」 「ん……」 「は、ぁう、ん……ッ!」  和音はもう、腹の上がどうなってるかなんて気付いてないんだろうな。 「ん、う、あ、ッ……あ、いっ……」  内腿が痙攣するように震えて、ナカがぎゅうと締まって。  それでも止められない。  和音の奥の方に出したい。  まだこどもはいらないと話した。避妊薬も服用してる。まだ和音だけを、和音がもう十分だと思うくらい愛していたい。  それでも本能がそうさせてしまう。  かわいいだろうな、和音のこども。だって和音がかわいいから。 「っあ、あ、ゆっ、あ、いく、あっ、や、まだ出ちゃ、あ、ゆうまさんっ、あ、あ、……ッあ!」 「待って、俺も出る、……かわいい、和音、口、開けて、ほら、苦しいかもしんないけど」 「ん、ン……する、して、口、いっぱい……」  薄く開かれた口に舌を差し込む。  甘い。甘くて、頭が痺れそう。おかしくなる。  ふたり揃って息を荒くして、呼吸も心臓も頭もおかしくなって、ぎゅうとくっついて、溶けてひとつになってしまいそうなくらい。  酸欠で死にそう。それでも唇を離せなかった。 「ふ、ぁ、っう、らめ、でう、出ちゃ……も、い、ゆーまさん、イきたいっ……」 「ん、いいよ……っ」 「……っ、あ、──……ッ」  まるで和音の声を食べてしまったかのようだった。  酷く甘い声は俺以外、誰も聞くことなんて出来ないのに。  俺ってこんなに、独占欲酷かったんだな。  ◆◆◆ 「は……」  眩しさに瞳を開けるともう……何時だ、うわ、十時。  勿論朝の、いや、昼前の十時だった。  横にはすうすうと穏やかな寝息の……たまに鼻を詰まらせたように、ず、と啜る和音が寝ていた。  目元は紅く染まっていて、涙の跡も涎の跡も残っている。  普段なら後始末をして、シャワーを浴びて、翌日の準備をして、綺麗なベッドで就寝、の予定だった。  え、抑制剤飲まないのこわあ……  ここから見えるだけで、和音の首元には紅くなった痕と噛まれた痕が見える。掛け布団を剥ぐ勇気はなかった。  和音の発情期はまだ初日が終わったばかり。  腕を伸ばし、自分の抑制剤を一錠、それと水。  ちゃんと約束は果たした。一回だけ。  俺には抑制剤を飲んでるくらいが合ってる。  躰もシーツもでろでろに汚れてるんだろうな……  和音が起きたら全部綺麗にしよう。和音も風呂にぶち込もう。きっとタオル程度では綺麗にならないだろうから。  夕飯も食べてない。腹が減った。和音にも食わせなきゃ。何を作ろうか。  ああ、約束したプリンも作らなきゃ。買ってきたプリンに頬を膨らませる和音もかわいいけれど、素人の作ったプリンに喜ぶ和音はもっとかわいい。  あのかおが見れるなら、俺は慣れない菓子作りでもなんでもしたくなってしまう。  ……かわいい。  巣作りが下手くそでも、なんだっていい。  でも次は喜ぶところも、褒められて嬉しそうにする和音も見たい。  ふたりで住み始めて、まだ色々と始まったばかりだ。  和音が働き始めたらきっともっと大変なことは増えると思う。  でも大丈夫だろう、根が頑張り屋だから。  そうだなあ、まずは自信をつけさせるために、一緒に勉強でもしてみようかな、巣作りの。  ……だってかわいいところをもっと見たいんだ、和音の。  今度はもっと、ちゃんといっぱい褒めさせて。  取り敢えず今は、甘いにおいの中、もう少し、一緒に。
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