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プロジェクターで壁に画面が映し出される。少し古めかしい映像が、妙にぐっとくる。やっぱりDVDにして正解だった。ブルーレイだとおそらく綺麗すぎる。
俺は角部屋に住んでいて、隣室は先日引っ越したので空いている。気兼ねなく音を響かせて見られるのはなかなかいい。
椿は身を乗り出して見ていた。これだけ反応してもらえたら、製作者も本望だろうなあ、なんて思いながら過ごした、あっという間の一時間五十八分。
椿が差し入れてくれた食い物もいつの間にか全てなくなっていた。
「面白かった!」
「そりゃ、よかった」
「衣装が凝ってるし、動物や魔物の動きがかわいい!」
「今の技術と比べたら単純だけど、見てて妙にわくわくするよな」
「終が好きな場面って、どこ?」
「好きとは違うんだけど、ペルセウスがアンドロメダを残して旅立つ場面が、なんだか印象に残ってて……」
この場面は映画のポイントでは全然ない。あらすじではまず紹介されないと思う。
危険な最後の死闘へ向かおうとするペルセウスに、アンドロメダは自分も連れて行ってくれと乞う。ペルセウスは「なら休め 夜明けに出発だ」と答え、アンドロメダは安心して眠りに就く。彼女が目覚めるとペルセウスはもういなかった。彼は恋人を危険な目に合わせる訳にはいかないと判断し、先に旅立ったのだ。
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