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壊れかけのパソコンがニュースを伝えている。
「この異常な暑さ続きで電力の需要が供給の限界を超えました。信号も止まり、交通事故多発。コンピュータが動かず病院での手術ができません。エアコンが効かない中で気温は終始50度を超え、雨も降らず水不足。土は死に、砂漠化し、作物も動物も干上がり、食料品も水も途絶えています。スーパーやコンビニも強盗に襲われ街は廃墟化、そして死者は増え続ける一方で――」
やがてパソコンのバッテリーも切れた。
転がったペットボトルに群がるように倒れ伏している人々。立ち上る熱気。どこまで行ってもそんな同じ風景が続いていた。
美菜さんもその中の一人だった。おでこも手足も沸騰した薬缶のようだった。
終わらない夏。終わらない暑さ。
夏は続く。
ボクは、美菜さんとの永遠の時間を手に入れた――
でも、あの素敵な黒目でボクを見つめてくれることはもう、なかった。
(完)
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