復讐~或る一人の少年の生きる理由(Ⅰ・Ⅱ)

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自分を虐げ嘲笑った人間を 全て木端微塵にする為に 少年は勉強した 爆弾の作り方を その為に必要な知識を得る為に 必要な材料を手に入れられるように 大学にまで行って資格を取って 『復讐』の為だけに 自分の人生の全てを捧げた そうして懐かしさを装って 過去の事など 何も恨んでいないふりをして 忘れたふりをして 同窓会を計画した 誰も欠席しないように 個々の予定を訊き入念な根回しをして みんなへの『プレゼント』を 『記念日』を その日に定めた それは叶えられる筈だった 叶えられなければならなかった だって それが彼の 『生きる理由』だったのだから けれど それは彼の両親によって あっさりと打ち砕かれた 爆弾を発見してしまった両親は 警察に通報した 自分の息子が 捕まる事を知り乍ら― それは息子の為なのか 重い罪を犯させないようにと慮っての事なのか ならば通報する前に説得すれば良かったのに そうする事もせず彼の両親は彼を警察に売ったのだ 彼は実の親にまで見放されていたのだ 彼をこの世に生み出した肉親でさえも 彼の味方ではなかったのだ 可哀想に そして事件が発覚すると 皆は口々にこう言った 「それ程恨まれるような事はしていないのに」 「ただちょっとふざけていただけなのに」と 誰もが皆 自分が『加害者』或いは『証人』である事を認めようとはせずに 自分を正当化しようとする 「自分は何もしていない」と 反省するどころか 自分達の非を認めようともしない 彼はそんな人間達を見て 暗い独房の中で また新たな『人生の目標』を見つけるだろう 今度はクラスメイトや教師だけでなく 自分を裏切った(ずっと裏切っていた)実の両親も そして自分には無関係な人々までをも 全てを亡き者にするという 壮大な目標を その巨大なエネルギーを 他の何かに向ける事も出来ずに― (2021年11月24日作の詩) 実際にあった事件としてTVで再現していたものを基に書いた詩。 逮捕された少年(その時は青年)がその後どうなったのかまでは放送されてなかったけど、クラスメイトがみんな「ふざけていただけ」「なんでそんなに恨まれなきゃならないの?」と言い逃ればかりしているのを聞いて、本人は納得したの? 逆に憎悪の念が強くなるだけだと思うけど。周りが自分達の「苛め」を認めて謝罪しない限り。 <無断転載・複写等禁止>
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