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「まぁ、ちょっと他より複雑ではあるけどこれで涙花がついていれば絶対大丈夫だよな」
「そう、かな。私、薫さんの支えになれるかな」
「なれる。薫にとっては俺たちなんかよりもずっと涙花の存在は強力なんだからな」
「──それは当たり前だよ」
私といっちゃんが話している後ろから薫さんの声がした。
「何、ふたりで僕の悪口いってるの?」
「わ、悪口なんて言ってない! 一応祝福の言葉をだな」
「ってか樹、ルイカに近過ぎ」
「え」
薫さんは私の腰に腕を回しいっちゃんから距離を取って自分の傍に引き寄せた。
「か、薫さん」
「おはよう、ルイカ」
「!」
いきなり頬にチュッとキスされた。その流れるような仕草に私もいっちゃんも顔が赤くなってしまった。
「こら、薫! 俺の前で涙花に変なことをするんじゃない!」
「変なこと? 何が? 恋人に朝の挨拶のキスをすることが変なの?」
「べ、別にその行為自体は変じゃないけど俺の前ではするな。なんか……照れる」
「なんで樹が照れるのか分からない」
「~~おまえはぁ」
「はいはい、ストップ! 朝ご飯にしましょう!」
またいつものような剣呑な雰囲気になるのを避けるために私はパンパンと手を叩いた。
「薫さんは顔を洗って来てください」
「……うん」
「いっちゃんは早くご飯を食べて。今日も営業なんでしょう?」
「あ、あぁ」
其々に声を掛けて私はキッチンに戻って朝食の準備を進めた。
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