異世界の技術に頼ってみよう

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 一先ず、第一段階はクリアした。現時点では、自分の記憶が表示に反映されただけの可能性がある。なので、こちらに召喚された日のニュースの情報を召喚する。その日の行方不明者のニュースを召喚する。その日に関連した不可解な事件の情報を召喚する。  出た。ニュース記事で、有名なアニメ映画になぞらえて「リアルな夢幻電車か?」とか言われている。そして、乗車記録はあるのに、その後の記録が無い人一覧。確かに、私達は元の世界で消えていた。多分、人によっては、身内から手厚く探されている事件となっている。  同じ路線を使っていた以外、目立った共通点の無い人達の消失事件。不可解が過ぎて、最早事件はホラー扱い。きさらぎ駅もびっくりな怪奇現象扱い。今の所、動画は召喚出来ない。召喚出来た画像は粗くて、その詳細は分からない。だが、記事の文字は読める。どうやら、現時点のディスプレイは「小説ならちゃんと読めても、漫画は読みにくいタイプの電子ペーパー」に近い様だ。  持続可能な取り組みの一環で増えた電子ペーパー。表示する文字によっては線と線が離れていない場合があるし、イラストとなれば尚更である。この試作品、ニュースの記事を読むだけなら十分な性能がある。試しに百科事典で適当に思いついた単語を調べてみたが、やはり文字であれば読める程度の解像度があった。この試作品を返却する時の為に、感じたことは紙に書き留めておく。  その後、技術者と人を介して何度かやり取りをしていく内に、ディスプレイの解像度は段々と上がっていった。また、消費電力ならぬ消費魔力も削減される様になった様だ。私の場合、魔力量が転生者特有のチートだが、殆どの人は消費する魔力にも制約がある。いや、私にも魔力消費量の制約はあるのだが、その量に大差がある。なので、実験するにも実用品にするにも、省エネならぬ省マジが必要となるらしい。  元の世界と、召喚された先の世界。違う所は沢山ある。だけど、見方を変えるだけで共通点は沢山ある。そんなことに、召喚されて一年程で私は気付いたのだった。
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