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柾さんが買ってきてくれたお店は、最近近所にオープンしたベーカリーショップで、気にはなっていたがなかなか行く機会がなく初めて食べる。
「すっごく美味しい」
「それは良かった」
「近くだし、また買いに行こう」
「あー、また連れて来てやる」
「へ⁈近所だし一人で行けるよ?」
ここで、驚くべき事実を知らされるのだ。
「月、今日の午後に引っ越しだ」
「えっと……。誰が?」
「月が」
「はい??何言ってるの?」
「この前約束しただろう?」
「約束って……。私が?」
「ああ、俺のマンションで一緒に暮らすって」
「……。私が?柾さんと?」
約束が何なのか気になっていたが、まさかそんな大事だったなんて……。にわかには信じがたい。
「信じられないって顔だな。嘘は言ってないぞ。証拠もある」
「しょ、証拠⁈」
「ああ」
柾さんから見せられたのは、私が柾さんのマンションへ行った時に、酔っぱらって無責任な発言をしている私の恥ずかしい動画だった。
いや、私が酔っぱらっているのを承知でこの動画を撮った柾さんは策士だ。だけど、証拠を残している時点で、私に勝ち目はなさそうだ。
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