第四話 モリスの森

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 深夜だからだろうか。森の中の暗闇がぞっとするほど暗かった。子供のころ、よくこんなところに一人で遊びに来たものだと感心してしまう。  アニエはマントの端をぎゅっと握りしめながら森に入った。途端に空気がひやりとする。  ――私は何をしにここへ来たのだろう?  その質問に答えられないまま、アニエはどんどんと森の中へと入っていった。  満月の明かりのおかげで火をともす必要はなさそうだった。けれど、それ以前に、明かりをともしてはいけないような気がした。この暗闇を乱してはいけない、というような直感があった。  とても静かで、フクロウもいない。  けれど、森のすみっこで何かが鳴いている。  その鳴き声の主を探そうと森の影に目を向けると、真っ黒の闇にぞっと震えてしまう。  ロランはモリスの森と物言わぬ森がつながっていると言っていた。  あんな暗闇の向こうに?  アニエは夢を思い出す。  もし、そうなら森の王子様はエルフだったのだろうか?  赤い角のユニコーンもエルフの森から迷い込んできたのだろうか?  森は奥に行くにしたがって青みを増していた。闇が深くなっているのか、それとも明るくなっているのかも分からない。満月はまるで他人事のように空に浮かんでいる。  そのときだった。
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