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深夜だからだろうか。森の中の暗闇がぞっとするほど暗かった。子供のころ、よくこんなところに一人で遊びに来たものだと感心してしまう。
アニエはマントの端をぎゅっと握りしめながら森に入った。途端に空気がひやりとする。
――私は何をしにここへ来たのだろう?
その質問に答えられないまま、アニエはどんどんと森の中へと入っていった。
満月の明かりのおかげで火をともす必要はなさそうだった。けれど、それ以前に、明かりをともしてはいけないような気がした。この暗闇を乱してはいけない、というような直感があった。
とても静かで、フクロウもいない。
けれど、森のすみっこで何かが鳴いている。
その鳴き声の主を探そうと森の影に目を向けると、真っ黒の闇にぞっと震えてしまう。
ロランはモリスの森と物言わぬ森がつながっていると言っていた。
あんな暗闇の向こうに?
アニエは夢を思い出す。
もし、そうなら森の王子様はエルフだったのだろうか?
赤い角のユニコーンもエルフの森から迷い込んできたのだろうか?
森は奥に行くにしたがって青みを増していた。闇が深くなっているのか、それとも明るくなっているのかも分からない。満月はまるで他人事のように空に浮かんでいる。
そのときだった。
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