其の参拾肆

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「あの……」 「どうした? 具合が悪いなら、早めに言ってくれ」 「違います。確かにさっきは驚きましたが、殿下がいてくださったので、どうにか大丈夫です。それで……あの……我儘なんですけれど……」 「なんでも言うがいい」 「はい。今、隣で寝てもらえませんか?」  青蝶の頼みに、飛龍はあからさまに口元を緩めた。 「そうか、良いだろう」  隣に横たわった飛龍は青蝶を腕の中にすっぽりと収めた。  改めて飛龍の逞しさを思い知る。 「見た目以上に華奢だな、其方は」 「これでも随分太りました」 「頑張ってもっと食べろ。こんな華奢では初夜を乗り切れないかもしれない」 「初夜……ですか?」  青蝶は顔を真っ赤に染めた。飛龍は今夜、青蝶を抱こうと思ってくれているのだろうか。  急に緊張してきてしまった。  ようやくショック状態が解け、呼吸が安定し始めた矢先だった。  勿論、青蝶は口付けられるたびに、その先に進みたいと願っていた。飛龍から抱かれるのは、ずっと願っていたことだ。だが、いざその時が来ると、どうして良いのか混乱してしまう。確か初夜の作法があったはずだ。  隣で寝てもらうとリラックスできるかと思ったが、全くそんな事態ではなくなってしまった。 「青蝶?」  何事かと、飛龍が顔を覗き込む。 「あの!! 僕はその……どうすれば良いのでしょうか?」 「青蝶? 其方は何もしなくても良い。私に身を任せて入れば……って!! 今夜抱くなど言っておらぬわ!!」 「そうなんですか? も、申し訳ありません。とんだ勘違いを……」 「はぁ……謝らなくても良い。青蝶が私に抱かれると期待してくれているなんて、嬉しいくらいだ」  飛龍は青蝶を抱き寄せ、脚を絡めた。 「私も早く青蝶と一つになりたい。でも、大切にしたいのだ。番になるというのは、其方の負担の方が大きい。私はずっと抱きたいのを我慢してきた故、きっと一度抱いてしまえば自制が効かなくなる。だから次の発情期までに、しっかりと食べて体力をつけておいてくれ」 「わわ、分かりました」
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