chapter2 花嫁を追いかけて

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【フランス・パリ・ (セント)メアリー国際バイリンガルスクール】   むすっとした顔で向かいに座っている少女を眺めて 伊藤アリスはやりきれないというように首を振った いったい世の中はどうなっているのかしら? この少女が言うには18歳で バージンが普通じゃないなんて 学年最終日の午後5時30分・・・・ 音楽教員でもあり スクールカウンセラーでもあるアリス 今は相談にきた生徒に 残っている忍耐力をかき集めて言った 「ねぇ・・・ミス・フィジー? あなたの年齢で経験していないのは 決して恥ずかしいことではありませんよ 若くて未熟なうちはセックスに 危険が伴う可能性もあるから そんなに焦って経験しないほうが 賢明だと私は思いますよ」 目の前の女学生が唇を尖らせてアリスを睨む 金髪に緑色の瞳を不満そうにこちらに向けている 着ている制服の白の詰襟に紺色のフレアスカートは アリスが在学中と変わらずで ここに預けられている生徒はみんな良家の娘だ その大事な親御さんから預かっている生徒に アリスは精一杯教員らしく規律正しく見えるように 胸を張って言った 「あなたが彼をとても愛しているのはわかりました でもせめて卒業まで待てない? 春休みが終わればあなたは最高学年生でしょ?」 そもそもそれが問題の一端ではないかと アリスは睨んでいた 学期が変わるこの数か月は最終学年にもなると 受験のストレスもあって毎年この時期になると はめをはずしたがる生徒がいるのだ   アリス達ももちろんいつの時代もそうだった 卒業式があるこの時期にはあちこちで 学年最後のパーティーが行われている そこでは就学を終えたという解放感に 酒やドラッグが付いて回るのだ アリスは伊達メガネの奥から じっとフィジーを見つめた 少女達が初体験をしてしまうのもこの時期だ しかしほとんどの少女は 偶然の成り行きでそうなるのだが フィジ―の場合は自らの意思で その決断をしようとしてた
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