chapter2 花嫁を追いかけて

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北斗が牧場主になってからは多くの事を成し遂げたが もっぱら改善に力を入れたのは 牧場や土地まわりのことだった 直哉もこのままでは酒乱の乱暴者になりかねない そして一番下の義理の弟も問題を 抱えている・・・・ しかし自分は牧場主であって子守りではない 一番下の義弟の明にも何が不満で どうしてやったらいいのかまるでわからない 明は慰め方をしらない北斗に絶望しきって 泣きながら眠ることもあった 「おーい北斗!俺はそろそろ帰るぜ  おっとこの家に来た用事を忘れる所だったぜ」  ビック・ジンが大きな包み紙と  封筒を3枚持ってきた 「Amazonからの荷物と手紙3通だ」  Amazonからの荷物を見ると  北斗の注文した本と大きな箱には  明のランドセルが入っていた 「そうかぁ~・・・ 坊主は今年から一年生か お前よくやってるな〜 」  ビック・ジンが感慨深げに言った 「いたらない所だらけだ・・・ 」 北斗は大きくため息をついて ビック・ジンから残りの手紙を受け取った その時ハラりと桜色の封筒が床に落ちた    差出人は「伊藤アリス」と書かれていた 「おい?どうした?俺もう帰るぞ 」   ビック・ジンが突然 北斗の顔つきが変わったのを見て言った それを遮るかのように北斗はビック・ジンに 手をかざした   アリス・・・・ :*゚..:。:. .:*゚:.。 すぐさま心の中で興奮と不安が交差してくる 彼女は今まで大勢の求婚者を拒んできた それならこの手紙はいったい何の手紙だろう 北斗は今でも彼女の魅力的な唇と それ以上に魅力的な知性溢れる彼女の 的確な美しい言葉遣いを記憶から振り払えずにいる 北斗は薄汚れたキッチンに行って 水を一杯飲んでから アリスの手紙の封を切った いかにも女性らしい 優雅で流れるような筆跡で書かれた手紙を 一心に読みはじめた ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 成宮北斗様   拝啓 新春の新しい季節に希望を馳せるこの頃 成宮様におかれましてはお健やかに お過ごしのことと存じます さて先日は何かといたらぬ私に 色々とお心遣いを頂き 言葉では言い表せないほど感謝しています あなたがご親切にご忠告くださったおかげで 大きな後悔をする事態を避けられました 近々あなたのお耳にも入られると思いますが 私と相手方の鬼龍院様との婚約は破棄されました 私のようなものに求婚してくださったことにも お礼を申しあげなくてはなりません 今となって思えば 私の評判が傷つくのを案じて下さったのですね 寛大なお申し出を お断りする形となってしまいましたが 気分を害されていなければ良いものと信じております 今後の私としましては 幸運にも私の女学生時代に留学していた パリの「(セント)メアリー国際バイリンガルスクール」で 音楽教員の職に就くことが出来ました この手紙を読まれる頃には 私はパリに旅立っているでしょう これからは懐かしい母校で後輩女学生たちと 音楽の素晴らしさを学ぶつもりです ご厚意とご忠告にあらためてお礼申し上げます 心をこめて 伊藤アリス ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 北斗は一言ずつじっくり読んでいった・・・ そして止めていた息を一気に吐いた すべきことが山ほどある 北斗はいきなりズカズカと 母屋を飛びだして行った 「お!おい!どうした? 」 慌ててビック・ジンが北斗の後を追う 「しばらく家を空ける そのために夕方までに雑務を終わらせる」 ビック・ジンが大きな体の割には小さな目を しばたいて廊下を渡って北斗の部屋へ着いてきた 「家をあけるって?何でまた? 」 「急用ができた、従業員にも指示するが 俺がいない間ナオとアキの様子を 見てやってくれないか? 特にアキの方を・・・ 出発は2~3日後になる その前にかたずけておかなければならない仕事がある」 ビック・ジンがもの言いたげな視線をむけた 「う・・まぁ・・・それは全然かまわないが・・・ いったいどこへ行くというんだ?」 そうビック・ジンが聞いた時には北斗は 引き出しから自分のパスポートを手に持っていた そして振り返ってこう言った 「パリだ! 」
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