19人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
サイアクな俺の人生
サイアクだ。俺の両親がとんだ。朝起きたらもぬけの殻だ。この部屋には元から何もない。けど、ここまで物がないのは初めてだ。
はあああーっと大きなため息をついた。さっき財布を見たらそちらもすっからかん。
あーあ、捨てられちまったよ。
「っはは。」
乾いた笑い声が聞こえた。ああ、俺の声か。腹減ったなあ、のども渇いた。コンビニでもいくか。そう思って玄関まで行ってやめた。
「金。」
またどさっと寝転がった。埃っぽくて、思わずむせてしまう。むせる、という行為に生を感じた。あーあ、生きてんのかよ、俺。いっそのこと殺してくれりゃよかったのに。もういない最低な両親に中指を立てる。
いつのまにか眠ってしまっていた。
起きたら、よくわからん奴らに囲まれていた。しかし、これだけはわかる。
こいつら、ヤのつく商売してる人たちだ。
「おい、お前大丈夫か?」
なんだよ、どうせ海に沈めるなら起こさなくたっていいだろ。それよか寝させてくれよ。
「若、どうします?」
「そうだな…。」
気が付いたら俺は空中にいた。ふわっといい香りが鼻孔をくすぐる。
「は⁉」
「生きてるみたいだな、行くぞ」
「どこにだよ?」
「そんなのお前に関係ない」
「わ、若、どうするつもりで?」
「さあな。でもここで死なれても迷惑だしな」
悪かったな。迷惑で。
「わ、若!」
「お前に関係ない」
「失礼しました」
逆らってはいけない、と本能が叫ぶ。
家の前には黒塗りのいかにもといった感じの車が停車していた。
子分らしき人が頭を下げながらドアを開ける。
さ、乗りな。その人から降ろされて、車に乗り込む、というより乗せられた。
怖くて、顔は見られなかったけれど、金髪だということだけはわかった。
いつのまにか、俺はまた眠ってしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!