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思いもかけずに
「あっ、すみません。突然ですけど、この卵を使って何か作ってもらえませんか?」
俺、千夜保(せんや たもつ)が 高校生最後の夏休みも終えるかという頃。
街を歩いてると、声をかけられた。
振り返るとそこにはレポーターと思われる男と3台のテレビカメラ。
そして、 簡易的なキッチンに案内された。
「ああ、良いぜ」
俺は1年の途中まで料理部に入っていた。
昼飯は自分で弁当作るし、屋敷に親父が居ない日は、俺が組員達の夕飯を作って振る舞う事もある。
俺の親父は、極道の頭で組長でもある。
俺は、その極道の1人息子だ。
俺は簡易キッチンに行くと、早速、作り始めた。
「何を作るんですか?」
「完成すれば解る。黙ってろ」
どうせ編集カットされるだろうしな。
俺は手際良く、天津飯を作った。
「料理を作った、ご感想は?」
俺は作るだけ作って、レポーターの質問を無視すると、その場を去った。
俺が去った後…。
「意外と美味いぞ」
カメラを止めた後、レポーターが天津飯を食べて、そう言った。
「態度は悪かったが、手慣れた感じだったな。見た目からして料理をしていないと思ったのに…」
「ギャップが良い。テレビ局に帰ったら編集するぞ」
数日後。
明日から学園は2学期を迎える。
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