ソフトに強引

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「七瀬は? 何やってたの」 「私は……」 「あ、待って。当ててみる」  私の答えを遮って、顔の前に右手を広げた浅井は「そうだなぁ」と眉間にシワを寄せて考え出した。なんとなくタイミングがズレてしまい、私はグラスに手を伸ばす。店名と共に描かれた椰子の木のロゴマークが結露で濡れている。この店は十七時を過ぎるとアルコールメニューがメインとなるため、同じアイスコーヒーでも紙コップで提供される時間とガラス製のグラスで提供される時間があるのだ。中身は同じアイスコーヒーだと思うけれど、グラスの方が美味しそうに感じるのはなぜだろう。これも外見と中身の話みたいに私が持つバイアスなんだろうか。  浅井は目を輝かせて人差し指を突き上げた。 「バレー部!」 「ハズレ」 「じゃあテニス」 「それも違う」 「……バスケ?」  だんだんと小さくなる声に、私は首を横に振る。浅井は首を窄めて「降参」と返した。
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