五月晴れ、青時雨

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五月晴れ、青時雨

 五月晴れの今日は、栃木にある彼の実家近くに遊びに来ている。二人で辺りを散策するために田舎道を少し歩くと、そこは森林のようで、木々から萌え出た若葉の緑が深まって、雨上がりの水滴を落とした。 「美しい新緑だな、着く前にこれを見せたかったのか?」 「いや、ここでちょっと考え事したくて」  隣の彼は、ザワザワと動く梢を眺めて心を落ち着かせているように見える。彼の言葉の意味を考えていると、彼の背後に、遠くで雷のような細くて薄い青い光が見えた。そういえば、天気予報を見てくるのを忘れた。俺はそれまで美しい自然を目にして清々しい気分だったが、何もない青空には暗雲が立ち込めそうな予感。 「……ご両親に紹介するの、嫌になったのか? なら……」 「そうじゃない」 「別に俺は後日でも……」   「両親に、お前と結婚したいって言って良いか?」  彼から予想外に提案された来年のジューンブライドの計画に、俺は二つ返事で答えた。
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