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まただ。
昼休み、校舎の2階から中庭を覗けば、花に水をあげている生徒が一人。一度ここにいるのを見て今日で一週間。毎日のように見かける。
上条麗羅。この学園での呼び名は「妖精さん」人間離れした綺麗な容姿とおっとりで親切な性格から来たらしい。
「優李?なにしてんのー?」
ぼーっと中庭を覗いたまま固まっていると、隣にいた友人、氷山彰人が声をかけてきた。
「あれ」
一度彰人へ向けた視線を中庭に戻せば隣からああ!?と元気な声が飛んでくる。
「ちょ、うるさ」
「妖精さんじゃーん!やっぱ噂本当だったんだー」
「噂?」
噂ってなんだろう。妖精さんに関する噂はかなりの頻度で色々なものが広まるので数が多すぎてよく分かってない。
「時間はそんな決まってないんだけど、毎日昼休みのどこかで妖精さんが中庭にある花に水あげてんだよ」
「へえ。でも、そんなに人いないんだね」
今僕らのいる校舎はほとんど使われていない旧校舎ということもあってか周りに人はあまり居なく、時折何人か通るくらいだ。
「いやさ、最初はみんな来てたよ?妖精さんを見に。だけどさ、親衛隊の人らが禁止して」
「え?わざわざ?」
あまりにも過保護な親衛隊に驚く。噂には聞いていたけどまさかここまでとは。
「そう!わざわざ!噂広まってみんなが集まるのも親衛隊が禁止令を出すのも早すぎて俺は噂程度でしか知らないんだけどなー」
「そう。…そう言えば、妖精さんって一人でいること多いよね」
普通あれだけ人気なら常に周りに誰か居てもおかしくないのに。
ふと思った疑問を口にすれば、思い当たりがあるのか彰人が少し表情を曇らせた。
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