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アトラクナクアの猖獗
勘解由小路降魔さんと12人の僕達 熱情の結実 ファーブルの憂鬱新装版
乱暴な所作で、勘解由小路はテーブルに腰かけた。
見えない存在が、テーブルから椅子を引いたのを見た者はいなかった。
「いらっしゃい!刑事さん。刑事さん、なんだよね?何か解ったの?」
声をかけたのは、眼鏡をかけた利発そうな女子高生だった。
お下げ髪が野暮ったく見えたが、それは彼女による演出に見えた。髪型というものは、見る者がいて初めて意味を持つ。賢い印象があった。
「ああ。行方不明になっていた、お前の育ての両親を発見した。死因は衰弱死。要するに餓死だ。全く身動きが取れず、長いことかけて死んでいった」
重厚な話題がなされて、彼女は気軽に声を発した。
「ふーん、そうか。独りぼっちになっちゃったね」
「悲しくはないのか?社会的に生活出来まいな?」
勘解由小路の口調は、どこまでもぞんざいだったが、それを気にかける風もなかった。
「うん。どうしよっか?刑事さん、あの変な眼鏡の人は奥さんでしょう?」
「いや、あいいつとはまだ入籍はしていない。えらく嫌われちまったしな。例えば、俺がお前を囲ったところで、どうということはない」
「へえ。そうなんだー。私、役に立つよ?おじさんの愛人になってもいいよ?私の本当のお母さんは」
「ああそうか。そうやってお前は、移動するのか。お前が生まれた狭いケージを出て、次は純朴な老夫婦。今思えば明白だった。あの時も、俺がお前のいる、この店を訪れた時から」
勘解由小路の回想が始まっていた。
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