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ペコリと頭を下げる城川。……本当に、俺に対する態度とは全然違うな。
そう言おうとして、口を閉ざした。なんていうか、そういうことを言うことも出来そうにない空気だったからだ。
「……なんていうか、キミ、可愛いね」
だけど、先輩。なにをいきなり口説いているんだ。
そんなことを思って二人のほうに近づけば、先輩は笑っていた。
「……そりゃあ、俺だから」
城川の言葉は、俺に対するものとほとんど一緒だった。なのに、何処となく覇気がない。照れているとでも、言えるのだろうか。
「うん、祈とは全然違うタイプの可愛さだ」
「……先輩」
先輩をジト目で見つめれば、先輩は俺の肩をバシバシとたたく。これは、先輩なりのコミュニケーションの一環だったりも、する。特に機嫌がいいときの態度だ。
「……俺、時本よりも可愛いし」
そして、城川は一々俺を下げないでほしい。
心の中ではそう言えるのに、口には出せない。……城川の視線が下を向いていたから。あと、なんだか顔が赤いから。
「城川?」
戸惑いがちに、声をかける。城川は、唇をぎゅっと結んだかと思うと――そのローテーブルに、額を打ち付けた。
いきなりの奇行に、俺はどうすることもできなかった。目をぱちぱちと瞬かせていれば、先輩が城川の額とローテーブルの間に、なんのためらいもなく自身の手のひらを挟む。
城川はそれに気が付いていたのか、気が付いていないのか。そのまま先輩の手のひらに額を打ち付けた。
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