【〆パフェ】

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この『ブレバード株式会社』に入社して4年目、26歳の俺が一番に覚えたのは、そつなく仕事をこなす要領の良さ。 希望の広告代理店だが、どんな熱量で取り組もうが結果に変化はない。 それなら、少しでも燃費を良くしたほうがいいと、存分に肩の力を抜く。仕事だけでなく全てにおいて斜に構えていた俺への評価は、いつもこうだ。 飄々としていて、悪くいえば冷たい。 それならそれで、いらぬ人付き合いをしなくていいから有り難い。 人は、他人に期待をし過ぎるからガッカリする。 はなっから、無関心なら裏切られることもないはず──。 「課長、お疲れ様です!」 俺なんかとは違って世渡りがうまい小早川を筆頭に、課長を慕う部下たちがお酌をしていく。 今も列をなしていて、俺の出る幕などない。 ちゃんと部下を叱ることができ、なおかつ部下に慕われるという稀有な上司は、この俺の考え方すら変えてしまったんだ…。 炭酸水をちびちび飲みながら、同僚たちと愚痴を言い合う。 それでも、視界の端っこで課長を捉える。 いや、捉え続ける。 どれだけ飲んでも酔わないというのは、やっぱり本当なのか。 顔色一つ変えず、部下たちの悩みを聞き、鼓舞し、まとめ上げていく手腕は、見事としか言いようがなかった。 そして課長が、デザートのアイスクリームを口に運ぶ。 バニラアイスだ。
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