ぽんたろー相談室

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ぽんたろー相談室

 昔からなんとなく、ではあるのだが。  私は夜中に必ず一回、トイレに起きる。明け方にトイレに行きたくなって“眠い、でもトイレに行きたい、でも今起きたら朝が早い……”みたいにもだおもだ悩むのが嫌だからだと思う。だから、深夜の二時くらいにトイレにいって、すっきりしてから朝まで寝るというのが基本スタイルだ。ちっちゃな頃からそうだから、多分そういう習慣がついているってやつなんだろう。  現在中学生になった私だが、その習慣は変わっていない。  変化があるとすれば一つ。少し前から保護猫のぽんたろーを飼い始めたので、なんとなく夜ぽんたろーの所在を確認するようになったということだろうか。  ぽんたろーが何の種類の猫かは知らない。ひょっとしたら実は普通の雑種じゃなくて、血統書つきの高い猫とか、あるいは高い猫の血ががっつり入っているとかあるかもしれない。青い目と、黒っぽい顔、白い体に茶色のブチっぽい模様が入っている。彼が五か月の時初めて出会ってから、なんだか心の奥底まで見透かされているような気になったのをよく覚えている。  多分、宝石みたいな目がどこまでも澄み切っていて、純粋に思えたからだろう。  自分で言ってて空しくなるが――私は自分が“ズルい人間”だという自覚がある。  昔からそうだった。掃除でしれっと、楽な役割を先にもらったり。委員会で委員長になるのが嫌で、それとなく副委員長に立候補してその役割から逃げてしまったり。  そんな己が嫌いで、でも自分を変えようという勇気も度胸もなく。なんだかぽんたろーの目に、そんな私の本性はすべて見透かされているような気がしたのだ。 「いいよね、お前は猫で」  私は時々ぽんたろーに、そう言って話しかけたのだった。 「学校とか、行かなくていいんだもんね。メンドクサイし、あんな場所なんであるんだろうね」    もちろん、ぽんたろーが返事をすることはない。それでも、まるで私の言いたいことが全部わかっているかのように、蒼い目で見上げてくるのだ。  ひょっとしたら喋れないだけで、彼は人間の言葉なんて全部理解できているのではないか。そんな風に思う瞬間があったのも、また確かなことである。
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