第1章 10年越しの恋とは

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 クラス会には、正装したアラサーとなった元高校生が集まった。  多香子は亜由菜や真里、澄子、夕梨花達と揃って会場に向かった。みんな結婚式で着たドレスを再び着るいい機会と張り切っていた。 「同窓会だって、男子を漁ろうだなんて思っていないからね」  多香子はふっと思ったことをいい出した。 「まぁ、出会いが無いからと言ってね」  警察官になっていた真里も続けた。 「そう、結婚しているのに引っかかるのだけはごめんだもの」  夕梨花も元気な声で言った。  そんな風に色々いいながら会場につくと、タキシード姿の幹事森島雅基(もりしままさき)が迎えていた。 「どうぞ、入って、入り口にある席順表と名札を持ってね」  もう一人の幹事栗原智(くりはらさとし)からセットで受け取ると席順を確認した。 「結構バラバラに座るんだ」  澄子が残念そうに言った。 「仕方ないよね。こっちはまた女子会やろうよ」  多香子はそこにいたグループのメンバーに声をかけた。 「そうだね。多香子がやっとラインに入ってくれたんだし」 「はいはい、確かにメールじゃご迷惑をおかけしました」 「そうだ、冬海もラインに入ってよ」  穂波(ほなみ)が冬海に声をかけた。彼女も修学旅行の時のメンバーだった。うちの高校は修学旅行が高校生活のメインイベントだった。1年の時から行く先を決め、2年になるとクラスごとに旅程を組んで、班ごとに行動をする。だから、修学旅行の思い出は同じ班でないと、少しづつ違う。  みんな立派なスーツやパーティドレスを着て、華やかな会になっていた。  皆が席についたのを確認すると幹事の森島が立った。 「皆さん、グラスを持ちましたか、卒業10周年おめでとうございます! 先生を呼べなかったけど楽しくやりましょう! では、かんぱーい!!」 「乾杯!」  そうして、場が盛り上がってくると、席を移して思い出話に花を咲かせていた。  多香子はなんとなく動くこともなく、適当の飲み物をもらっていた。  隣に冬海や澄子がきて近況を話していると、いつの間にか前に塚嶺が座り、二席空けた所に時田が座った。 「塚嶺くん、私さ、本当に好きだったんだよ」  時田が絡みだした。 「だから、修学旅行に行く前に、女子皆いるところで、私は塚嶺くんが好きだから協力してって言ったくらいなのに」 「えっ……」  塚嶺はものすごく困った顔で、上目使いで眼の前の多香子を見た。  塚嶺の方を見ていた多香子は、高校時代の事を思い出していた。もしかして彼は……。  そして、助けてあげられなくてごめんねと思っていた。それくらい真剣な目をしていた。
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