今夜、月というものが

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「ただいまー」 ルナにバイバイして家に着くと、パパとママが珍しく二人揃っていて、何だか忙しそうにしていた。 「何してるの?手伝おうか?」 「ああカイス、おかえり。別にいいよ、部屋にいなさい」 パパとママは科学技術庁に勤めている。別に偉くはないみたいだけど、ちょっとだけ自慢。 だからなかなか二人同時には会えないし、二人が何かしているとしても、僕に手伝える事はあんまりない。 夕御飯まで自分の部屋でいつものように動画でも観ていよう。 防寒コートを脱いでベットに転がり、タブレットで動画サイトを開くと、やっぱりオススメには月や星に関する動画がいっぱい。適当にその一つを開いてみる。 『──もうすぐ、月を肉眼で見れる日がやって来ます! この動画では、月に関するお話や、それ以外の惑星の事も語ってみたいと思いますので、面白いと思ったら高評価やチャンネル登録を……』 他の惑星? 『私達の住む地球は、太陽系に属する惑星です。 これは大昔の人なら誰でも知っていた常識なのですが、太陽系には地球の他にも水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星という惑星とそれぞれの衛星、そして冥王星を始めとする準惑星がありました。 しかし、科学と魔法の力で守られた地球以外の惑星は、今では全て軌道を変え、或いは…………』 へえ、先生は話してくれなかったなあ。明日教えてあげよっと。 『…………地球の衛星だった月も、500年前に地球の側から離れて、今では気の遠くなる様な宇宙の旅をしています。 そして三日後の8月15日には二等星程の明るさで肉眼で観測可能になり、更に三日後の18日、かつて毎日人々が見上げていた大きさの月を見る事が出来る様になります。これは200年ぶりの事です』
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