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「判決。早坂栄治、あなたは殺人罪によりジゴク行きです」
は?
「は? え? ちょ、ちょっと待ってください!」
何で俺が殺人罪? 殺人どころか万引きとかの犯罪歴さえないぞ。
「何を待つのですか?」
「俺の地獄行きです!」
決まってるだろ!
ここは日本人専用の死後の世界らしいのだ。
で、俺に地獄行きを宣告したのは、死後の世界の裁判官らしいのだ。
いや、これは夢ではないのか。
しかし、俺は確かに死んだのかもしれない。
見知らぬ男に「死ね!」と包丁で胸をズッポリと刺されたのだから。
「判決は覆りません」
「じゃ、じゃあ、控訴します」
「死後の世界の裁判は一審制ですので無理ですね」
「え?」
マジで?
「あの……俺は本当に殺人なんてしてないのです……」
「泣いても無駄ですよ、99%の人はそう言いますね」
泣いてないもん!
泣きそうだけど。
でもね、本当に冤罪なんだよ!
「あの、俺が殺されたのって、俺の殺人罪に関係してます?」
「あなたを殺したのは、あなたが殺した女性の婚約者です」
「あ、なるほど」
いや、知らんし!
「ジゴクは大変ですよ」
「え?」
「死ぬまで奴隷です」
「は? 奴隷って、あの奴隷?」
「その奴隷です」
「地獄で奴隷?」
地獄の鬼とかに死ぬまで働かされるの?
いや、もう死んでるけど。
「はい。この宇宙が消滅するまで、あなたは生まれ変わっても必ず奴隷です」
「え?」
へ? 何、その無限生き地獄ループ。
「日本で生きていた記憶は残ったままでジゴクでの奴隷。本当にきついらしいですよ」
「え?」
確かに、それは本当にきついかも。
「日本での記憶を話したり書いたりもできないので、ジゴクの有力者に取り入って奴隷から平民になるとかも不可能ですし」
「え?」
それ、ちょっと考えた。無理なの?
日本の知識で地獄を改革!
俺スゲー! とか無理なの?
「そろそろ時間ですね」
「え?」
「ジゴクへはランダムに送られますが、楽なジゴクだといいですね。では」
「はい?」
視界が真っ黒になった。
楽な地獄ってあるの?
どうやら、俺は地獄で生まれ変わったらしい。
地獄の奴隷の赤ん坊として。
目の前には薄汚れた女性たち。
見た目は完全に日本人だな。
しかし、ここはボロい馬小屋みたいな場所だ。
『あの、ここは?』
あ、普通に話せる。
「え? この赤ん坊、日本語を話した?」
「まさか」
「地獄で日本語は話せないはず」
そんな感じでザワつく出産現場。
これ、しくったか。
「オンギャー オンギャー」
どうだ?
「さっきの日本語は聞き間違い?」
「そうよ」
「だよね」
「そもそも、産まれたての赤ん坊がオンギャー以外は言わないし」
「そうよね」
赤ん坊はオンギャーで正解だったようだ。
こうして、俺の二度目の人生(地獄生活)がスタートしたのだった。
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