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お前に何がわかるんだよ!
「……そんな事があったんですね」
「ああ」
「それでここまで走ってきたと。驚きですよ。上村君が降りた駅から、どれだけ離れてると思ってるんですか?」
「あはは、笑っちゃうよな」
「笑えませんよ……」
俺はなるべく感情的にならないように、間違っても泣いたりしないように淡々と説明した。途中で危うく泣きそうになったけど、頑張った。
こいつ、一生懸命聞いてくれるんだもの。
「俺が馬鹿だったんだよ」
「何でですか?」
「心のどっかで、いつかチャンスが来て佐倉さんと付き合えるんじゃないかって勝手な夢を見てた。何も……何もしなかったくせにっ!」
「上村君……」
我慢してた事が、言いたかった事が、悔しさが、悲しさが、情けなさが、次から次へと心の奥から浮かんでくる。
「こんなに泣くなら、悲しいなら! 自分でどっかできっかけ作ってワンチャン狙って告ってればよかったじゃねえか! こんなになってから泣いて後悔するなんて……」
また、涙が溢れてくる。
情けない。
みっともない。
いくらなんでも篠原だって、自分が悪いのに、後悔してヤケになって泣いてる俺に呆れてるだろう。
でも、止まんないんだ。
悲しさが、悔しさが、涙が止まんないんだよ。
「上村君……ツラかったね。何でも聞くから、いっぱい言っていいですよ」
こんな姿、誰にも見せたくなかったのに! と思っても、肩に置かれた手と言葉の温かさに、なおさら涙が止まらなくなる。
「でもさ……ずっとずっと……好きだったんだ。本気だったんだ」
「……はい、知ってます」
「佐倉さんの笑顔が、優しさが好きだった」
「はい」
「好きって言えなくても、佐倉さんにいつか振り向いてもらえる自分になれるように頑張ってたんだ……!」
「…………ええ、わかります」
ええ、わかります。
その言葉に、カチンときた。
でも、モヤモヤが止まらない。
やめろ!
ダメだ!
優しく聞いてくれている篠原に、言っちゃダメなヤツだ!
「……お前に何がわかるんだよ!」
びくり。
篠原の手の動きが止まった。
肩をさすってくれてた手が、ゆっくりと離れていく。
終わった。
俺、最低だ……。
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