Haruko [2]

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「落胆しているんですか? また営業妨害されると思って」 「そんなんじゃ……」 「君こそ、結婚したんじゃなかったでしょうか。おめでとうござい……」 「してません。ていうか、言ってくださいよ、一週間って。へたくそですか? 勘違いしてたこっちが馬鹿みたいです」 「先日君は、僕に口をはさむ隙を与えないくらい一人でまくし立ててたではありませんか」 「ていうか、なんなんですか? 『私情を挟みたくありません』って。私情? はあ? どんどん挟めばいいじゃないですか。ただの珈琲屋なんでしょ?!」 「君はどうしてそんなに怒ってるんですか」 「怒ってます。だって私……高円寺さんは失礼でデリカシーがなくて、おまけにとてつもなく変人だけど……でも」 「君、主に前半、すごいひどいこと言ってますよ」 「だからつまり、高円寺さんの淹れるコーヒーが好きなんです。大好きなんです」  そこまで言うと、春子は一直線に高円寺の目を見つめる。すると、糸が切れたみたいに高円寺が緩やかに微笑む。 「僕も好きです」
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