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雪子は思わず繋いでいない方の手で、俊の腕をギュッと握り、
「右前に、元夫の不倫相手がいます」
雪子はこわばった声でそっと俊に告げた。
すると俊は、さりげなくその方向へ視線をやる。
そこには、少しぽっちゃりとした、雪子よりも少し年上と思われる
女性の姿があった。
そこで俊は言った。
「大丈夫だよ。俺がついている!」
俊の言葉に、雪子はしっかりと頷いた。
しかしその手は少し震えていた。
2人が近づくと、みなみがこちらを見た。
そして、雪子の顔を見つけると、驚いた顔をしていた。
みなみはすぐに、隣にいる俊をチェックし始める。
しかし、そこにはみなみもうっとりとしてしまうような
超ハイスペックの俊がいたので、
みなみの表情は一気に悔しそうな顔へと変化した。
その時、2人がみなみへと近づく。
一瞬、雪子とみなみの視線がぶつかった。
しかし雪子はみなみに向かってフッっと笑みを浮かべた。
雪子の人生において、最初で最後の精一杯の演技だった。
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