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ベースのピチカートに乗ってトランペットが前奏を吹く。木管のメロディーがそれに続き、弦楽器とトロンボーンがサビを歌った。
指揮者の古沢先生が振り返って、手拍子をすると、高齢者の皆さんも一緒に手拍子をしてくださった。会場が温かい雰囲気に包まれる。
その後2曲、昭和歌謡のアレンジ版を演奏し、最後に旧文部省唱歌『ふるさと』をみなさんに歌っていただきながら演奏した。
風変わりなことは何もしない。刺激的な曲やモダンな曲はいっさい演奏しないけれど、演奏を終えると大きな拍手がわき起こる。涙を流している人もたくさんいらっしゃった。
楽器を片付け、施設から出ようとしたとき、後ろから『よかったよ!』と声がかかる。野上モナだった。他の軽音部の2人も晴れやかな表情をしている。
「聴きに来てくださり、ありがとうございます」
古沢先生が野上モナに声をかけた。
「いえ。こんなに大勢の皆さんを幸せにできるって、素晴らしいことだと思います。私たちも頑張りますね!」
野上モナは弾けんばかりの笑顔で、そう答えた。
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