第17話 告白の時

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第17話 告白の時

 キースは自分の部屋に戻ってきていた。  (俺が結婚? 冗談じゃない) 思わずキャサリンに結婚を断ったが、きっと父上はお怒りになるだろう。 それも仕方のないことだ。  (偏食の俺が結婚なんて出来るわけがないだろう) 「疲れた……」 キースは書類机に突っ伏して目をつむる。 軽い眠気がキースを襲い、キースは眠りに落ちていく。 「サラ……」 その狭間でキースは無邪気に笑うサラの笑顔を思い出していたのだった__。  私はステラからピンクのマーガレットをもらい、城に帰る支度をしていた。 「ステラさん、今日は夕食をご馳走になって、私の話まで聞いてくれてありがとうございました」 「僕もサラさんと2人で食事ができて楽しかったよ。また食べに来て!」 ステラはそう言うと、窓のほうを見てから私に笑いかけた。 「城まで送っていこうと思ったんだけど、迎えが来たみたいだよ」 「えっ?」 私が窓のほうを見ると、そこには花屋の中を一生懸命覗こうとしているレンがいたのだった。 私は急いで花屋の入り口のドアを開けた。 「レンさん!」 「おわっ!!! いきなり開けんじゃねーよ! びっくりするだろ!」 レンは赤くなりながら頭をかく。 「ごめんなさい!」 「ほら、帰るぞ」 レンは中にいたステラに軽く頭を下げると、再び城に向かって歩き出した。 「あ、待ってください、レンさん! ステラさん、また来ますね!」 「キース様とまた来てくれると嬉しいよ」 はい! と笑顔で答えて、私はレンの後を追った。  レンに追いついた私は、レンの隣を並んで歩いた。 「迎えに来てくれてありがとうございます」 「カインに頼まれたんだよ。サラがどこにもいないって」 レンは照れたように答えた。  (カインさんにも心配かけちゃった。明日謝りにいこう) 「あのさ、なんかあったのか?」 レンが私を気にしながら尋ねる。 「実は、キース様のお見合いのことで動揺してしまって」  (何? お見合い?) レンはドキッとして立ち止まる。  (キース様が結婚しちゃったら俺の計画がパーになるじゃないか!) レンが動揺しているのも知らずに、私は話を進める。 「私、気づいたんです。キース様のことが好きだって」 「そ、そっか。俺、応援してるからな、サラのこと! そう、応援するから!」  (キース様の結婚を何がなんでも阻止してやる!) 「ありがとうございます、レンさん」 レンが違う意味で応援してくれていることも知らず、私はほっこりした気持ちでレンにお礼を言うのだった__。  次の日。 私は混雑する昼の食堂を手伝っていた。 最後の騎士が食堂をあとにする。 「はぁ〜。今日も忙しかった〜」 私が伸びをしていると、後ろから声をかけられた。 「サラ、仕事は終わったのか?」 そこには私の姿を見に来たカインがいた。 「あ、カインさん! はい、もう終わりました」 「そうか。元気そうで良かった」 「あの、カインさん、昨日は夜遅くにお城の外に出てごめんなさい」 私はカインに深々とお辞儀をした。 「もしかして、キースのお見合いのことを知ったのか?」 「はい……。それでどうしていいかわからなくなって、ステラさんのお花屋さんに行ってきました」 「キースのことが好きなのか?」 カインははっきりと私に尋ねる。 私はカインの目を見てうなづいた。 「はい。私、キース様のことが好きです。 だからキース様に自分の気持ちをちゃんと伝えようと思います」 「そうか」 私の真剣な表情にカインもうなづく。 「俺はいつもお前の味方だ。頑張れよサラ」 「はい」 味方になってくれる人がいる。 それだけで、私は勇気が湧いてくるのだった__。 「キース様、失礼いたします」 そんなに会えなかった訳ではないのに、私はすごく緊張していた。 テーブルに料理を並べて、昨日ステラからもらったピンクのマーガレットを飾る。 そして遠慮しながら席についた。 「キース様」「サラ」 2人が同時に名前を呼び合った。 「あ、ごめんなさい。キース様からどうぞ」 「あ、ああ」 キースも少し緊張しているようだった。 「昨日、パーティーに来なかったのか?」 「はい……」 昨日の女性たちの会話を思い出し、また落ち込んでしまう自分がいる。 でも、キースに素直な気持ちを伝えたい。 「私、キース様のお見合いのお話を聞いてしまって、パーティー会場から逃げたんです。すごく悲しくなって、たくさん泣いた後に気がつきました」 私は顔を上げてキースの目を見つめる。 「私、キース様のことが好きです」 言ってしまった。 その瞬間、まるで時間が止まってしまったかのように私とキースはお互いを見つめあったまま動けなかった__。
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