第九章 真実

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ここでイリスは、ソフィーの方を見上げて。 「…あの、ひとつお願いしてもよろしいですか?」 「ええ、勿論。何でしょうか?」 ソフィーが応えると、イリスはほっとしたように笑って。 「天使長様に、言伝をお願いしたいんです。『明日からの神殿守護職を、至急手配してほしい』と」 「…分かりました。すぐにお伝えしてきます」 ソフィーはイリスに向けてしっかりと頷いて見せ、颯爽と病室を出て行った。 イリスはもう一度、アークを見つめると。 「アーク、お願い。今日だけ、私に浄化させて。それが終わったら、ちゃんと安静にしてるから」 アークは相変わらず、苦しい表情を浮かべていたが。 「…分かった」 最後には、頷いた。 ☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩ まだ歩くこともままならないイリスは、アークに抱きかかえられながら、騎士団の馬車に乗って南の神殿に移動した。 清めの作業はリタたちが済ませたため、あとは祭壇から浄化の力を注ぐだけ。アークに祭壇の前まで連れて来てもらい、跪いて両手を組む。 瞬く間に、神殿は浄化のエネルギーで満たされた。 (…うん、大丈夫。どうにか浄化できそう) イリスはゆっくりと顔を上げ、振り返る。 「アーク、次は西の神殿にお願い」 「…ああ」 アークは再びイリスを抱え上げ、南の神殿を後にした。 西の神殿でも、同様にイリスは祭壇の前に跪く。 (これで最後…どうか、力がもちますように) 祈るように力を注ぐ。神殿に、ゆっくりと浄化の力が染み渡っていく。 4か所全ての神殿の浄化が、終わった。 イリスがほっと力を抜いて、目を開けた、その時。
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