16人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
ここでイリスは、ソフィーの方を見上げて。
「…あの、ひとつお願いしてもよろしいですか?」
「ええ、勿論。何でしょうか?」
ソフィーが応えると、イリスはほっとしたように笑って。
「天使長様に、言伝をお願いしたいんです。『明日からの神殿守護職を、至急手配してほしい』と」
「…分かりました。すぐにお伝えしてきます」
ソフィーはイリスに向けてしっかりと頷いて見せ、颯爽と病室を出て行った。
イリスはもう一度、アークを見つめると。
「アーク、お願い。今日だけ、私に浄化させて。それが終わったら、ちゃんと安静にしてるから」
アークは相変わらず、苦しい表情を浮かべていたが。
「…分かった」
最後には、頷いた。
☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩
まだ歩くこともままならないイリスは、アークに抱きかかえられながら、騎士団の馬車に乗って南の神殿に移動した。
清めの作業はリタたちが済ませたため、あとは祭壇から浄化の力を注ぐだけ。アークに祭壇の前まで連れて来てもらい、跪いて両手を組む。
瞬く間に、神殿は浄化のエネルギーで満たされた。
(…うん、大丈夫。どうにか浄化できそう)
イリスはゆっくりと顔を上げ、振り返る。
「アーク、次は西の神殿にお願い」
「…ああ」
アークは再びイリスを抱え上げ、南の神殿を後にした。
西の神殿でも、同様にイリスは祭壇の前に跪く。
(これで最後…どうか、力がもちますように)
祈るように力を注ぐ。神殿に、ゆっくりと浄化の力が染み渡っていく。
4か所全ての神殿の浄化が、終わった。
イリスがほっと力を抜いて、目を開けた、その時。
最初のコメントを投稿しよう!