第五話

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 なんだか意外だ。桜寿は自分のことをあまり好ましく思っていないのだ、と香栗は感じていた。威凪刃がからかいの言葉をかける。  「なんだ、貴様。まさか香栗様に気があるのか?」  くっくっ、と笑う威凪刃。が、桜寿が目を逸らし「ちがっ」と再び言葉に詰まる様子を見て、青ざめる。  「貴様、そうなのか。え、嘘だろう?」  「だから、違うと言っているでしょう!」  「いや、だが。その反応は」  「とにかく! そのうち声をかけますから、そのつもりで」  小走りで去る桜寿を眺め、威凪刃は「まったく」と呆れる。それから香栗の顔を見ると、香栗は、心ここにあらず、といった表情をしていた。  「香栗様!?」  「桜寿さんが、わたしに……」  「お気を確かに!」  威凪刃は香栗の肩を掴み、揺する。しばらくの間、講義の話が頭に入ってこない香栗だった。
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